中島みゆき
この10曲の中にきっとあなたがいるはず

濃密なアルノベムだと思う。曲数は10曲と特別に多いわけではない。
でも、何度か聴いているうちにそれぞれが入り組んだように呼応して
いるように聴こえてくる。

1つの言葉や一行のセンテンスが他の曲とつながりあうことで、それまで
単体の曲として聴こえてき旡EUiどうしが違う光を放ち始める。

その密度の濃さはこれまでのアルバムのなかでも屈指ではないだろうか。

タイトルは『組曲(Suite)』である。言うまでもなく複数の曲を連続して
演奏することを言う。

ただこのアルバムの『組曲(Suite)』には名前がない。チャイコフスキーの
『「くるみ、割人形」組曲』とか、ホルストの『組曲「惑星」』のように、
“ナントカ組曲”というタイトルがついてない。

それぞれの曲が独立し存在を主張しつつ組曲としてまとまっている。
つまり、そうやって作り上げられている世界が一色ではない。
一つの物語を展開するための曲という印象はない。

その分ぐどんな風にも解釈できるし違う聴き方も出来る。それが一層
濃密さを増すことになる。喜拏哀楽、個別の感情で並ぶ全ての曲が
同等の存在感で相乗効果として迫ってくる。

11月11日発売!

強いて探せば1曲目の「36時間」がそのモチーフということになるのだろうか。
“追いつめられた心たちよ36時間に来ませんがと歌われている。そう、今、
本人が気づくと気づかざるとに関わらず、たいていの人たちが
“追いつめられている”。

このアルバムのなかの“悲しみ”も“愛”も“痛み”も“怒り”のどれもがそうやって
追いつめられた心”の物語と言って良いのだと思う。この10曲のなかにきっと
あなたがいるはずだ。

そんな一曲一曲のドラマをより赤裸々なものにしているのは、彼女の声だ。
マスタリングエンジニアが変わったせいもあるのかもしれない。一語一語の
ニュアンスや語尾の“ね”や“よ”がこんなにリアルに聴こえるアルバムは
初めてだろう。

突き抜けた明るさや慈しむような優しさ。たぎるような激しさや凛とした強さ、
そして、穏やかな諦観や押し殺したような悲しさまで、1つの曲のなかでも
言葉によって歌の表情が全く違うのだ。

そういう意味で言えば、このアルバムは「組曲・中島みゆき2015」ということ
なのだと思った。

2014年の彼女は「麦の呶」に集約させることも出来たかもしれない。
でも、今年の彼女はそうはいかないJその充実ぶりはこのアルバムが
証明している。


from:TSUTAYA RECORDS